関連者間取引申告等の提出
ポストBEPSの移転価格リスクは、新たに三層構造の文書化制度(マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書)を導入で、移転価格税制に関するコンプライアンスを遵守していることを検証し確認することが求められています。 2016年6 月29 日付で「関連者間取引申告と同期資料の管理に関する公告」([2016]42号)(以下「42号公告」という。)が公表された。42 号公告は、BEPS の行動計画 13(多国籍企業の企業情報の文書化)に対応するものであり、中国においても、三層構造の移転価格文書(国別報告書、マスターファイル、ローカルファイル)が導入されることとなり、2016年1月1日から施行されている。
⑴ 42 号公告で提出を要することとされた文書の概要 イ 企業年度関連者間取引報告書 実質所得者課税の行われる内国法人及び中国国内に機構・場所を設け、かつ実際の所得に基づき企業所得税を申告・納付している外国法人は、納税申告書の提出時に、「中華人民共和国企業年度関連者間取引報告書」を添付しなければならない。 ロ 国別報告書 多国籍企業グループの最終持株会社で、かつ前会計年度の連結財務諸表における各種の収入金額の合計が年間55億元(約935億円)を超える内国法人は、上記イを提出する際に国別報告書を作成しなければならない。 なお、国別報告書では主に、多国籍企業グループにおいてメンバーとして構成される全ての事業体のグローバルの所得、租税及び業務活動の国別分布状況を開示することとなっている。また、中国国家税務総局は原則として租税条約の情報交換規定に基づき国別報告書を入手することとしているが、一定の場合(多国籍企業がいずれの国にも国別報告書を提出していない場合等)には中国子会社に国別報告書の提出を要求することができる。 ハ マスターファイル 以下のいずれかの条件に該当する企業は、マスターファイルを準備しなければならない。 ①年度においてクロスボーダーの関連者間取引が発生し、かつ当該企業の財務諸表を連結する最終持株会社の属する企業グループが既にマスターファイルを準備している場合②年度における関連者間取引が10億元(約170億円)を超えた場合。 なお、マスターファイルには、組織構成、企業グループの業務、無形資産、融資活動及 び財務・税務の状況が含まれる。 また、企業グループの最終持株企業の会計年度終了日か 12か月以内に中国語で準備しなければならず、国家税務総局の要求があった日から30日以内に提出しなければならない。
ニ ローカルファイル 以下のいずれかの条件に該当する企業は、ローカルファイルを準備しなければならない。 ①有形資産の所有権の譲渡金額が2億元(約34億円)を超える場合 ②金融資産の譲渡金額が1億元(約17億円)を超える場合 ③無形資産の譲渡金額が1億元(約17億円)を超える場合 ④その他の関連者間取引の金額が合計 4,000万元(約 6.8 億円)を超える場合 なお、ローカルファイルには、企業の概況、関連関係、関連者間取引の概況(バリューチェーン分析や地域性特殊要因等)及び比較分析が含まれる。 また、関連者間取引が発生した年度の翌年6 月 30 日までに中国語で準備しなければならず、国家税務総局 の要求があった日から 30 日以内に提出しなければならない。 ホ 特殊事項ファイル 企業が、①コストシェアリング契約を締結若しくは実施する場合又は②企業の関連負債比率が基準比率を超え、独立取引の原則に合致することを説明する必要がある場合には、特殊事項ファイルを作成しなければならない。 |